
食物を飲み込むためには3つのドアと3つの部屋を通過しなければならなりません。その口底を詳しく解説していきます。
- 3つのドア:①口唇 ②咽頭入口部(口峡) ③食道入口部
- 3つの部屋:①口腔 ②咽頭 ③食道
Ⅰ.先行期 (食物の認識)
視覚的:食物を認識することにより、味・硬さ・温度・大きさなどを連想する。
嗅覚 :原始的な感覚といわれ、大脳辺縁系(快・不快を感知)に嗅覚中枢があり、食べ物かどうかの判断と味覚と連動して「美味しさ」を感じさせる。
*食べ始める前に唾液・胃液の分泌が盛んになり、反射的に食べる準備が整えられる。
認知・情動
目を開けている(覚醒): 脳幹網様体が関与する
空腹を感じる:視床下部(外側野の満腹中枢、腹内側核の摂食中枢)が関与する
食欲を感じさせる:大脳皮質が関与する
Ⅱ.準備期 (口腔への取り込み・咀嚼と食塊形成)
A.口腔への取り込み
●四肢・体幹への取り込み
上肢操作による口周囲への運搬 → 手指の把持・肘の伸展・肩の外転
開口に合わせて、頭部が食物を迎えにいく→わずかな前傾姿勢
●口筋群:食物の取り込み、口腔内保持を行なう
口輪筋:口唇を閉じる
頬筋:口角を外側に引っ張り、口裂を閉じる
笑筋:笑うときに働き、口角を外側に引っ張り、えくぼをつくる
※以上は顔面神経支配。
B.咀嚼と食塊形成
口腔粘膜や舌の表面、咀嚼筋など咀嚼に関する器官に分布する知覚神経
↓
咀嚼中の食塊の状態を脳に送る
↓
脳は情報を即座に分析して咀嚼筋を動かし口唇を閉じなくても食物が口からこぼれないようにコントロールする
↓
食塊:口に取り込んだ食物は舌と歯を巧みに使って唾液と混合され咀嚼され、咀嚼動作を繰り返すうちに食物は飲み込みやすい形に整えられる。
↓
食塊は舌の運動によって口腔を唇側から舌奥へと移動する。
*咀嚼運動は随意的なものだが、口腔粘膜や舌の表面、咀嚼筋など、咀嚼に関する器官に分布する感覚神経が働いて、咀嚼中に食塊の状態を常に監視して脳に情報を送り、脳は情報を即座に分析して咀嚼筋を動かし、繰り返すうちに飲み込みやすい形(食塊)に整えられる。
これは意識せず行われるため咀嚼には不随意運動的要素が含まれているといえる。
Ⅲ.口腔期 (舌根部~咽頭への送り込み)
嚥下の口腔期は随意相口腔から咽頭に食塊を送る時期にあたります。
咀嚼終了
↓
舌が先端から口蓋に押し付けられる
↓
食塊が舌奥から咽頭の嚥下反射が誘発される部位へ送り込まれる
↓
軟口蓋が上後方へ移動
↓
舌根部は下方へ移動してドアは瞬間的に全開となる
↓
食塊が通過すると舌根と軟口蓋さらに舌全体と硬口蓋は閉じる
*次の反射的咽頭期を開始するために重要な時期で、反射惹起には、口腔内の味覚、触覚的刺激のみならず舌の能動的運動に伴う求心性刺激も関与するとされている。
a.舌運動:食塊の運搬
b.感覚刺激:嚥下反射を引き起こす
Ⅳ.咽頭期 (咽頭通過、食道への送り込み)
咽頭相は反射相であり、不随意的に行われるので意識とは無関係になされます。
まずは、以下の図の動きをしっかりイメージしてから、以下を読み進めると頭に入りやすいと思います。
c.口腔の閉鎖
d.鼻腔・咽腔の閉鎖
e.舌骨・咽頭の挙上
f.咽頭蓋の反転
g.声帯の内転(fとgによって気道が塞がる)
h.咽頭の収縮→食塊が送られる
i.輪状咽頭筋の弛緩→食道入り口が開放
食塊が咽頭・喉頭蓋・軟口蓋の粘膜中に分布する知覚神経を刺激→嚥下反射誘発
↓
咽頭が挙上し嚥下反射誘発
↓
軟口蓋が後上方へ動いて咽頭後壁につく(鼻腔へ通じる窓を閉鎖)
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披裂喉頭蓋ひだと喉頭蓋により喉頭口閉鎖(気管へ通じる窓)
↓
舌根が咽頭後壁に押し付けられ、咽頭壁に蠕動運動が生じる
↓
舌下圧を形成
↓
食道入口部の食道括約筋(輪状咽頭筋)が弛緩し一気に食道まで食塊を送り込む
*嚥下反射による食塊の食道への移送が一瞬(正常では1秒以内)のうちにおこり、この一瞬は呼吸運動が停止している。
下の奥へ食べ物が送られます。
奥舌から咽頭への送り込み。
咽頭を通過して、食堂への送り込み
Ⅴ.食道期 (食道通過)
嚥下食道期も前項と同じく反射的に行われている時期になりますので、意識的におこなうことはできません。
j.食道の蠕動運動→食塊の搬送
食道に食物が送り込まれる
↓
食道括約筋はぴったりと閉鎖
↓
蠕動運動により胃へと運ばれる
*食道から胃へ蠕動運動と重力により、食塊が送られる。
食道に入ったところです。 食道を通っている最中。
このような流れで嚥下が行われていますので、これのどこかに異常があれば誤嚥や嚥下障害となってしまいます。
しっかり頭に入れて試験対策をしていきましょう。