正常な嚥下運動における重要な生理的働き
① 嚥下動作を開始させる舌の働きには、口腔底において、顎舌骨筋・オトガイ舌骨筋・顎二腹筋が同時に収縮することが必要
② 茎突舌筋・舌骨舌筋は、舌根が軟口蓋および咽頭後壁に押し付けられるようにする
③ 口蓋帆挙筋・口蓋帆張筋は、軟口蓋を挙上し、さらに短縮および背側に肥厚することによって後方の咽頭筋に近づき、鼻咽頭の方への逆流を防止する
④ 中・下咽頭括約筋は、下咽頭を狭くし、一般的にはパッサファント隆起と輪状咽頭筋の間の高さに位置している咽頭後壁をも含む蠕動運動を起こさせる
⑤ 喉頭蓋は背側下方に傾くが、喉頭が筋によって挙上させられることと、口腔底が収縮し同時に舌骨の挙上および後方移動が起こることによる
嚥下の基本的な生理的要件
① 食塊を形成すること
② 嚥下動作中に食塊がバラバラになってしまうことを防ぐこと
③ 食塊が送り込まれていくために圧差を生じさせること
④ 舌・喉頭が上方に動き、かつ喉頭が前後方向に傾くことによって陰圧域が作られ、食塊は咽喉頭に吸い込まれる
⑤ 鼻咽頭あるいは喉頭に食物や液体が入り込まないようにすること
⑥ 呼吸停止を最小限にとどめるよう咽頭部の通過を素早くさせること
⑦ 食道から胃への移行時に胃からの逆流を防ぐこと
⑧ 咽頭および食道に食物が残らないようにすること