
刺激伝導系の伝達経路と心電図からちょっとだけ深く掘り下げてみたいと思います。
ただ、これだけみれば心電図を読めるようになるというものではありません。このまとめをみて、大まかに把握した上でしっかり勉強されると良いでしょう。
電気軸とは? 電気軸の正常値と異常値
電気軸とはどんなものなのか?
- 心臓が脱分極する時に生じる起電力(一定の方向、大きさおよび極性を持つ)が示す心臓ベクトルの方向。
- 起電力は3次元的な空間ベクトルとして表される。
心電図の第Ⅰ~Ⅲ誘導のQRS波高は心臓の起電力を示す心臓ベクトルが、アイントーベンの三角(Einthoven三角形)の各辺に投影されたもの。
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第Ⅰ~Ⅲ誘導(双極誘導)のQRS波高から前額面における平均ベクトルのおよその大きさと方向を知ることができる。アイントーベンの三角形とはどのようなものかというと、心臓を中心にして正三角形を当てはめたもので,Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ誘導のQRS波高を用いて前額面の心臓起電力の大きさと方向をベクトルに示すことができる。
電気軸の正常値と異常値
1)正常 :0°~+90°
2)左軸偏位:0°~90°
3)極端な左軸偏位:-90°~-180°
4)極端な右軸偏位:+180°~-90°
双極誘導
一般的にに行われる心電図のとりかたとしては、標準12誘導心電図と呼ばれる方法である。
これが単極誘導と双極誘導に分けられ、双極誘導について簡単に解説する。
2肢間の電位差を記録するもので、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導の作る三角形が“アイントーベンの正三角形”である。
- Ⅰ誘導:右手と左手の間の電位差(右手 → 左手への流れ)
- Ⅱ誘導:右手と左足の間の電位差(右手 → 左足への流れ)
- Ⅲ誘導:左手と左足の間の電位差(左手 → 左足への流れ)
Ⅱ=Ⅰ+Ⅲで表され、前額面のベクトル変化を表す。
単極誘導の
興奮が心臓の電気的中心から捜査電極の方向に向かって来るほうを+、逆に遠ざかってゆくほうを-と感知し、心電図では+が基線より上にふれ、-は基線より下にふれる。
右肩、左肩、横隔膜方向に向かう電極をそれぞれ、aVR、aVL、aVF誘導で用いられる。
aVR:右手(肩)誘導
aVL:左手(肩)誘導
aVF:左足誘導(横隔膜方向)の方向から興奮が心臓から近づいたり遠表す。
前額面でのベクトル変化をあらわしている。
臨床における軸偏位の簡単な見方
第Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導のR波の振幅の大きさに注目すれば、軸偏位の大要を知ることができる。
1)正常電気軸:第Ⅱ誘導のR波が、第Ⅰ、Ⅲ誘導のR波よりも高いとき
⇒RⅡ>RⅠ、RⅢ
2)左軸偏位:第Ⅰ誘導のR波がもっとも高く、次いで第Ⅱ誘導、第Ⅲ誘導の順に低くなるとき
⇒RⅠ>RⅡ>RⅢ
3)右軸偏位:第Ⅲ誘導のR波が最も高く、次いで第Ⅱ誘導、第Ⅲ誘導の順に低くなるとき
⇒RⅢ>RⅡ>RⅠ