胸部誘導の見方と波形から読み取る心臓疾患
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胸部誘導は、心臓の電気的誘導を水平面に投影して異なった場所から順次に眺めて、全体的な電気現象を構築する

  • V1:第4肋骨間胸骨右縁(第4・5肋骨間)
  • V2:第4肋骨間胸骨左縁(第4・5肋骨間)
  • V3:V2とV4の中点
  • V4:第5肋骨の高さで左鎖骨中線上の点
  • V5:V4と同じレベルで左前腋窩線上
  • V6:V4と同じレベルで左中腋窩線上

 

(※ 必要に応じて以下の誘導を記録する)

  • V7:V4と同じ高さで左後腋窩線上
  • V3R:V3を右側に移したもの
  • V4R:V4を右側に移したもの

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胸部誘導が表すそれぞれの意味

胸部誘導は、捜査電極が心臓に近いため電極の心筋の性状をよく反映する。第4・5肋間の高さで,胸部を輪切りにした水平面に心臓の電気現象を投影する。

  • Ⅰ・aVL:左室前側壁,高位側壁
  • Ⅱ・Ⅲ・aVF :下壁横隔膜面
  • aVR:心室内腔
  • V1・V2:右室,左室後壁
  • V3・V4:左室前壁,心室中隔,心尖
  • V5・V6:左室側壁

 

各波の意味と記録方法

  • 横:速度を表す・・・1mm0.04秒=5mmで1秒
  • 縦:電圧を表す・・・1mm0.1mv=10mmで1mv

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P波

心房の興奮(脱分極)を示す

Ⅰ・Ⅱ・aVF・V~V6誘導で陽性,aVRでは陰性であることが正常洞調律として必須

正常:時間:0.06~0.1秒
小さくなだらかな波 電圧:0.25mV以内
PQ(PR)間隔
(心房興奮伝導時間)
P波の始まりからR波(Q波)の初めまでの間隔。心房から心室に興奮が伝わるまでの時間 【正常時間:0.12~0.2秒
洞結節に発した興奮が右心房を脱分極させてから心室作業筋を興奮させるまでの時間,つまり心房から心室に興奮が伝わるまでの時間を意味する
房室伝導時間
QRS群
(心房興奮伝導時間)
鋭い上下方向のフレ 正常:時間:0.06~0.08秒
心室作業筋の脱分極により描かれる
ST分節
(心房興奮伝導時間)
S波の終わりからT波の初めまでの部分で、心筋梗塞などの心筋の障害によって変化する 正常:時間:0.1~0.15秒
心室興奮の極期
T波
(心室興奮の回復期))
QRS波の後に続く緩やかなフレ 正常:時間:0.2~0.6秒
心室筋の興奮の回復過程(再分極)を示す 電圧:0.25mV以上
U波 T波に続く緩やかな波
原因は不明でT波の後に見られる小さなフレ

 

 

波形から心臓病を診断する指標

P波 左心房・右心房の拡大 → 容量・圧負荷による
歩調とり源の推定 → 冠静脈洞リズムなど
QRS群 心筋梗塞の部位 → QSパターンとその誘導から
脚ブロック、WPW症候群、心室肥大に伴う心室内伝導障害 →QRSの形と幅
R/S Rの高さとSの深さより右胸心、軸偏位、左室肥大、右室肥大 →R/S比より
ST分節 貫壁性急性心筋梗塞の時期
異型狭心性発作、心膜炎 → ST上昇から
普通の狭心性発作
心筋症、心筋炎
心室肥大、ジギタリス効果 → ST低下から
T波 高K血症、低K血症、心筋虚血、心室肥大 → Tの高さ・逆転の程度などから
U波 低K血症 → Uの増大
心筋虚血、心室肥大など → Uの陰性化
QT間隔 副甲状腺機能亢進症(高Ca血症)→ QT短縮
副甲状腺機能低下症(低Ca血症)、QT延長症候群、抗不整脈中毒 → QT延長
PとQRSの関係 各種頻脈性、除脈性不整脈 → PP間隔、PQ間隔、RR間隔、各派の形より